布団を干せた日

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Tick, Tick... Boom!  チック、チック、、、ブーン!(ネタバレあり)

Tick, Tick... Boom!  チック、チック、、、ブーン!(8本目)

 

学生の頃、Seasons of loveのメロディが大好きで寝起きに聞いていた。

歌詞の意味をその後に知って、この曲がミュージカルのものだと更にその後に知った。

 

それに、その好きな曲の作曲者を知らないまま、チックチックブーンを観た。

チックチックブーンが事実に基づいた映画だっていうのも知らずにみた。

 

この映画は、あのブロードウェイで大ヒットしたミュージカル、レントの作者の実話ベースの映画です。

 

めちゃくちゃ良かったです。好きなミュージカル映画にランクインです。

曲だけじゃなくて、ストーリーも役者の演技も、総合で良かったです。

 

観終わった後に検索したんですけど、Google検索のAudience rating summaryが2234ratingsで4.9ってやばくないですか。

 

まず、構成。「チックチックブーン」という舞台(未来)と、その舞台の元の話となった30歳が迫る主人公の話(今)が交互に流れます。

なので、未来の舞台に引っ張られて、今も舞台のような、第一幕、第二幕の構成がしっかりしていて、全然退屈しません。2本のお話を丸っと観るような濃厚さです。

 

最初は未来の部分は、心の中の声的なことなのかな、とか思って観ると思うんです。多分、チックチックブーンがレントの作者の前作のミュージカルのタイトルだって知ってる人って本当に少ないと思うんです。で、その心の中の声は、実はこの人の次回作だったていう、観客のイメージを覆しながら、現実の世界線の時間と未来の世界線の時間の流れが近づいていく感じ。それに伴って、私の中ではエイズ、ミュージカル、レントが重なっていって勝手に二重の伏線を回収しているような気持ちになりました。心の声って訳じゃないから、最後のナレーションが彼女かどうかわかりませんが女の人の声になっていて、なるほど〜ってなりました。

 

掛け合わせで言うと、チックチックブーンのタイトルにもかけて、20代最後のリミット、お披露目会までのリミット、彼女との関係終了へのリミット、エイズの友人の人生のリミット

色々な同時進行がここでも観てる人の心をつかんできます。

 

この時計の針の音、カウントダウンの音が聞こえるって、誰しも体験したことがあると思います。誰しも年末のカウントダウンはすごいチックチック聞こえたことがあると思うし、試験の開始や終了の時、大事なイベントがあるとき、締め切りが迫ってる時。一人の若者の焦燥感というだけの話で終わらせず、それを構成、そして言葉に、素晴らしい曲にのせたことが、この作品がここまで高い評価につながっているのではないでしょうか。

 

曲と合わせて役者のセリフや動きもリズミカル。だけど、緩急がしっかり取られて、落とすところではしっかり落とす

 

2時間の映画なのですが、ミュージカルっぽく各キャラクターの持ち歌があったりして、それぞれの感情が盛り込まれています。

「Sunday」からの彼女との喧嘩のミュージカルシーンの盛り上がり、惹き込まれました。

映画ならではの音楽だけでなく、中盤の新曲の楽譜が水中で浮かんでいく演出なんかはすごい凝られていました。あと、最後にバースデーケーキの蝋燭を吹き消す演出もよかった。チックチックから始まったものが、火を消すという行動で、ちゃんと終わりと始まりになっている感じが、、いい!

 

お披露目会での歌を歌う女性陣達もすごい綺麗な声出し、喧嘩の歌の時、チックチックブーン舞台での女の人のやり切った歌い方もすごい魅力的でした。

 

どの女性キャラクターも魅力的で、エージェントの女性もよかったです。

おばちゃんが「描き続けるの作家ってものよ」って言って、「次、書くよ」的な響いてる風で電話のシーンが終わったのに、次の瞬間、友人のところに駆け込んだの面白かったです。

 

このシーンで、主人公の吐露した感情は、もう夢追い人は完全同意じゃないでしょうか。

長い時間かけて、何もお金の生まれない、逆にお金がマイナスになって作り上げた作品が、誰の目にも止まらない。なんの価値も生まれない。道楽でやっている、趣味でやっていると言い切れずに、これで生きていきたいと思っている。

けど、誰にも観てもらえないというのは、自己の存在の否定であり、続けていくモチベーションの維持はとんでもない熱量だと思います。

 

でも彼には、ミュージカル界の巨匠的存在の人から認められていたり、個人的に電話をもらったり、大好きな親友が才能がある支えてくれたり。そして、それを言わせる才能があって、創作活動を続けていきます。

 
エージェントのおばちゃんが「身近なところで書いてみなさい」ってことで、次はかなり自伝的な作品、のチックチックブーン。
さらに、その次は自分の身の回りのことを取り上げながら、チックチックブーンより社会問題も含まれたレント。
8年間で1作を描き切り失敗した後に、5年で2作、3作目で大ヒットの作品。
 
すごくみんなが思う、普遍的なことを具現化し、言葉にする。そこまで難しい言葉じゃないのに、みんなの心に刺さる、歌詞になる。
 
1作品目は作中でも少し流れますがやはりとっつきにくい舞台設定(画面の世界とか、今の世界観じゃん。先取りすごいなと思いました)。
でも、そのとっつきにくい作品の中で、大御所に「凝りすぎて見えなくしている」って指摘を受けたうえで、彼女を思って作った曲で、レントの曲もすごいまっすぐで、大御所とエージェントの指摘の的確さですね。
 
あーーーってなります

 

ちなみに、主演のアンドリュー・ガーフィールドスパイダーマンアメージングの人だというのは見終わってから言われて気が付きました、、この前も映画館で観たはずなのですが。

めちゃくちゃ歌も上手いし、迫真の演技でした

 

今年、まだ1月ですが、観てよかった映画No.1です!2時間、他のことが頭に浮かばずに自宅で映画を観れたのは久しぶりの感覚です。

 

ぜひ、観てください。

 

私はまたもう一回見直すし、レントも聴きたいと思います。