布団を干せた日

感じたことや映画・本の感想など

同志少女よ、敵を撃て

「同志少女よ、敵を撃て」

逢坂冬馬

 

<あらすじ>

第二次世界大戦下、ソ連で編成された女性狙撃集団。史実に沿った、女性たちの物語。

主人公は狙撃兵である少女。戦争の中で経験していく復讐、仲間、敵、生死。

 

「敵」「善悪」という絶対的でない概念、人の信念や心情、時代によって変わりゆくものを前に戦う少女達が描かれています。

かなり丁寧に時代背景が描かれおり、ウクライナとロシアの戦争がある今、読めてよかった一作品です。

 

 

<ネタバレあり感想>

狙撃兵団の中には、ウクライナ出身や少数民族出身の少女がいたり、もちろん人間ドラマがしっかり描かれている小説ではあるのですが

枠を超えて学ぶことができる本です。

 

1,ただ、結構なボリュームがあること、

2,専門用語(銃の名前、地名)に慣れるまで少し時間がかかること

が、読書あまりしたことない人にはネックでしょうか、、、

漫画化やアニメーション化など、メディア化され多くの人が見ることができたらいいなと思います

 

余談ですが、大人気すぎて地元の図書館では500人越えの待ち人数でした。

何年越しに読めるのでしょうか、、

 

<知ることができてよかったこと>

・参戦国で唯一女性兵がいたソ連

 p75

  「アメリカ製のカラフルなプロパガンダポスターでは、勇ましく出征する兵士たちの後ろでチアガールのように応援している姿が目立ち、要するにこれがあの国における女性の役割らしかった」

 「ナチ・ドイツのポスターには、いかにも写実画の中でブロンドの女性らが農業と家事と看護に明け暮れていた」

  という参戦国の中で、ソ連では志願兵として100万人の女性兵がいたそうです。

  平等さというよりより一層の画一化では、と思案する描写もありつつ

  ラストのエピローグで、終戦後の女性兵たちについて描かれているのですが、このことも知れてよかったです。

  タイトルだけ知っていた「戦争は女性の顔をしていない」にも繋がるラストとなっており、作者の構成力を感じました。

 

・戦争下での敵国女性への性暴行

 このことについては、冒頭からラストまでいくつものシーンで描かれており、主人公の「女性を守る」という動機の根拠だったり、敵を撃つ衝動に繋がったり大切なキーとなっています。戦下において敵国女性への性暴力というものが隠さずに描かれています。

「女性を守る」と掲げた主人公ですが、その中において「敵」は誰なのか。「敵を撃つことが女性を守ることなのか」など必ずしも一面でない、複合的な現実の中で葛藤します。

 

・ロシアで女性同士のキスは友好関係において珍しくはないということ

 そういった文化があったことに驚きました。

 

<この本を読んで調べ直したこと>

1914~1918年 第一次世界大戦

1939~1945年 第二次世界大戦

1800年代からの日本の領土の変遷について

革命戦争について

 

調べたからといって簡単に理解はできていませんが、、、とりあえず調べました。

 

少し話が変わるのですが、、、ウクライナとロシアについて思うこと。

世界大戦からたったの100年しか経ってないという中で、当時の虐殺や倫理観を考えると文明面に反して遅れを取りながらも確実に進歩しているのではと思っていたので

 

ウクライナとロシアのニュースは衝撃でした。

衝撃と共に「ウクライナが新ナチ国家扱いというロシア国内の報道がある」というニュースを聞いて、無知であるが故に、疑問が浮かんでいました。

 

ただ、ソ連軍がドイツと戦った背景、初めて収容所の解放を行った国であるという歴史やロシア国内での教育、報道を知ると、そのような報道が国民の心理に語りかける要素があるということをその後思うことができるようになりました。無知でいたくはないと思いました。

 

戦争は人を悪魔にする性質があると主人公の幼馴染が語ります。

「悪魔になる性質がある」「社会的な問題」「悪魔にならないと生きていけない」そんな背景があり、簡単なことでは全くないのですが、

狙撃兵として敵を殺してきた主人公の答え「相手が悪魔であろうと、それを言い訳に悪魔になってはいけない」

が沁みました。