布団を干せた日

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あちらにいる鬼・感想

あちらにいる鬼

井上荒野

 

<ネタバレあります>

 

帯には瀬戸内寂聴のコメントがのっていました

「作者の父 井上光晴と私の不倫が始まった時、作者は五歳だった。」

 

名前こそ変えてあるものの

作者井上荒野の父親と母親とその恋人だった瀬戸内寂聴のお話である。

 

なんとも、人間らしい人たちのお話だった。

不倫についての罪悪感や憎しみ、善悪など。そういった世で語られるようなところとは違うラインの話であり

私が不倫について知りたかった、読みたかったことが書かれているような気がしたし

その話題を超えて、人を愛することや、生きることについて感じさせてくれるお話であった。

 

読む前は、娘さんはどんな気持ちで書くものなのか。もしも自分だったら到底書けないだろう。などと想像していたが、読後はなんだか嫌悪とかそういうものを超えて、人として3人を捉え、客観的に、そして内面を、愛を持って書かれており、作者の才能に対して、私もみはるやチチのような気持ちになった。

 

私が瀬戸内寂聴のことを知った時はすでに出家された後のことだった。

この小説の中の瀬戸内寂聴はやっぱり魅力的な人で。

ホテルの一室に相談にきた女性に「早く出ていってほしい」と思いながら「バカなことを言わないで」とピシャリというエピソードが好きだ。

ああ、そんなバカなことを言う不倫なら、そんなものはやめちまえ、と私も思った

不倫という言葉は一緒かもしれないが、心で通じている人達なら、そしてそういう人を愛するなら、それはまた別の名前があるのではないでしょうか

 

奥さんとみはるにとって

「私たちの男」

奥さんの

「私のもの」

 

そういった、言葉一つ一つが、とてもしっくりくる表現で溢れていた

 

「夏の終わり」という小説などには、この本に至るまでの瀬戸内寂聴の恋愛が私小説として書かれているようで、私の中で次に読みたい本にランクインした

 

人の関係に名前をつけてしまいがちな人には読んでみてもらいたい。

別に善悪は置いておいて。

誰が可哀想、誰に悪いという人も読んでみてほしい

twitterで恋愛相談して、変な人に捕まったり、yahoo知恵袋で答えのない答えを探したり

そんなことをしている女性がいるなら、この本を読んで、仕事にでも集中してほしい