花束みたいな恋をした 分析してみた
映画館でも観て、今回U-NEXTでも観た花束みたいな恋(をした。
すごくリアルな映画ってことで、評判が高いこの映画。
何がリアルなのか、どのような構成なのか、勉強させてもらいました。
そして、改めてセリフの素晴らしさを感じました、、
ネタバレありまくり、自分の解釈入りまくり、一言一句正しいものではないので、ご注意ください、、
<構成、起承転結>
①起
起で起こること→
つかみ、タイトル、各キャラ紹介、出会い、仲が深まる、恋に落ちる
(うまくいかない人生から新しい出会いを経て、少しのハードルはあるが、新しい世界へ入るところまで)
前半→人生うまくいかないな〜という、主人公たちが出会い、盛り上がり始める
後半→若干の敵で少し落ちるが、乗り越え、上がっていく
②承
起で起こること→
デート、告白、キス、うまくいかないこと(就活)、同棲スタート
(一番楽しいところから、敵のうっすらした雰囲気出しつつ、ピークに繋がる悪いことが起きて、ピークまで)
承のいいことアイテム→イラストの仕事、自由、良き理解者の恋人、ラブラブ、一緒の時間、一緒の趣味、共感
うっすらとした暗い影、その後に繋がる伏線→ブロガーの死、共有できないアイテムの登場(猫・ワイヤレスイヤホン)
(具体的ではなく、悪いことを匂わせる、抽象的なもの)
前半→一番楽しいところ(視聴者が見たいところ)
後半→悪い出来事、敵の伏線からピークまで
③転
転→学生終了、両親、現実、お金、認められない才能、お互いの衝突、カルチャーを通さない現実世界の価値観の違い
(敵が襲いかかり、ピークのアイテムを失い、ワースト状態に)(敵は具体的なもの、主人公たちの行動がこれによって変わり、衝突が起きる)
前半→<忍び寄る敵に2人で向かっている>
<すれ違ってない(まだ失っていない)>
確信的でないものから失われていく
(時間、友人カップルの別れ、第一の衝突(応援できなくない彼女)、衝突の解決がちゃんとされてない、暗喩としての積まれた本)
彼女はまだ好きな本を共有しようと頑張る<まだ起承のアイテムを維持しようとする>
後半→<忍び寄る敵へ立ち向かうも圧されていく>
<すれ違う(失う)>
確信的なものが失われていく
(第二の衝突(決定的なずれ、結婚観のずれ、そしてなんとなくの仲直り)、 先輩の死、第三の衝突(話し合いをしようと思わなくなる)、スキンシップ、応援できない彼氏)
(積まれた本、本をトランクに雑にしまう→二人の間に積まれたままの課題、課題を押し込み蓋をするという暗喩)
共有をやめ、お互い一人で行動をするように(一人で舞台に、一人でゼルダ、一人で仕事、文芸誌を見せない、一人でビジネス書)
<起承のアイテムの維持をやめる>
④結
→別れのアイテム(遺品整理、最後のセックス、仲間の結婚)のなか、別れの決断、話し合い、別れ。新恋人、新生活。楽しい思い出になっている
笑える、納得した別れ。
(主人公たちの決断、実行。問題解決。その後の様子。明るく終わる)
<転・結では前半の起承で出てきたアイテムが呼応していく>
(いいと悪い、あったとない、ないとあるで)
・彼女の就活(見送る彼氏)、彼氏の就活(見送る彼女)
・ブロガーの死、先輩の死
・有線イヤホン、ワイヤレスイヤホン
・イラストの仕事、仕事なくなる
・自由な時間、会社の時間
・共感(一緒の趣味・一緒の時間)、共感できない(一緒の趣味をやる時間、体力がない)
・お揃いのスニーカー、スーツ用の靴
・付き合う前のラーメンブログ、オダギリジョーに誘われるラーメン
・付き合う前に歩いた深夜の高架沿い、別れる日に歩く夜の高架沿い
・告白されたファミレス、別れ話をするファミレス
・始まりの時にバックハグでみた夕日、終わりの時に触れ合わないでみた朝日
・広がるカーテン、畳むカーテン
・背中同士で寝る二人、正面から抱き合い別れる二人
・W杯の話、その後のインタビューの話
・二人で行動、別々の行動
<すごい所>
*同じ、似たアイテムでなされるコントラスが数多く、散りばめられていて自然に視聴者の胸をうつ
*ナレーションが別々→交互→別々と、お互いのずれを表している演出が効果的
*盛り上がりの前には一回下げる、盛り下がる前には一回あげるテクニックが入っており、視聴者の期待を裏切れったり、落差を大きくする効果が出ている
*盛り上がり、落ちる時にいくつものクッションがあり、だんだんと変化するので、急な感情の変化だなーと視聴者が思わない
*言葉のチョイス、また具体的な商品名やアイテム名を出すことで物語の解像度が上がり、深みが出る(天竺鼠、2014年のW杯、ミイラ展、1日に1500PV)。またそれにより、キャラクターが身近にいそうな人にみえて共感度が上がる
*キャラクターに大袈裟な凹みやネガティブはない。結以外はさらっと泣くくらいで邦画にある大袈裟な感じがない(これも誰でも感情移入しやすいポイントかも)
*キャラクターの性格は身近にあるネタについて、こういう時、どうする?というエピソードで表されており、説明的出ないし、キャラクターを身近に感じる(郵便受けに入るチラシを見たら、街中で一回デートした人に会ったら)
*女子の言葉がいい。「いやいやふざけんなし」とか「ほぼうちの本棚じゃん」とか、軽くて自然な言葉遣い。そして、「またかとは思うよ、またかだから」、「じゃあの数が多いんだよ最近」など、喧嘩の口調がリアルすぎる
*ブランケットが臭かったとか、隣のおじさんの手術の話とか感情をエピソードで語る。
「もうポイントカードはとっくに溜まってて」とか、「絶対嫌われたと思った」とか。直接的でない表現をする
伝えたいメッセージもイヤホンの例え話などに乗っけてする。
*同棲を始めてから急に具体的な数字の日付が出てくる(4月13日とか)付き合い始まりは時間の感覚がないほど、楽しくて、同棲始めることには細かい日付覚えるくらい楽しくて。でもこれが同棲進んで、険悪になっていくと日付や季節を言わなくなる演出
<好きなセリフ>
「好き嫌いは別として、押井守を認知していることは広く一般常識であるべきです」
「はい。世界水準です」
「カラオケ屋に見えないように工夫したカラオケ屋でカラオケをするIT業界人はたいてい、ヤンキーに見えない工夫をしたヤンキーで」
「山根さん、私、カラオケ屋さんに見えるカラオケ屋さんにいきたいです」
「電車に乗っていたら、ということを彼は、電車に揺られていたら、と表現した」
「同じことずっと考えていた人のこと、知ってる」
「行ってたら会ってたかもしれないですね」
「でも、もし行ってたら、今日はあってなかったかもしれないですね」
「ですね。じゃあ、これは今日ここで会うためのチケットだったってことですね」
「もったいない。今話しかけないで。まだ上書きしないで。まだ昨日の夜の余韻の中にいたいんだよ」
「信号はまだ変わらなかった」
「押しボタン式だった」「サンキュー押しボタン式信号」
「あ、あと、こういうコミュニケーションは頻繁にしたい方です」
「はい」
「出会いは常に別れを内在し、恋愛はパーティーのようにいつか終わる」
「この恋を一夜のパーティーにするつもりはないと書いていたのが一年前」
「息抜きになんないんだよ。パズドラしかやる気しないの」
「結婚する未来もあったと思う。でも、別れること考え出したら、瘡蓋みたいに剥がしたくなる」
「我々のこれまでの道のりは美しかった、あと一歩だったって。」
<男女の差がすごいセリフの所>
<彼女>
「調布駅から徒歩8分にある彼のアパートには、旅行するアテもない国々の地中の歩き方が置いてあって」
「細い雨が街頭のオレンジに切り取られて降り注いでいた」
「雨の音を聞きながら、彼の描いた絵を見ていたら、彼はすごく照れて、バスルームからドライヤーを持ってきた」
「コンセントがぎり届いて、私の髪を乾かし始めた」
「何かが始まる予感がして、心臓がなったけど、ドライヤーの音が消してくれた」
<彼氏>
「私山根さんの絵好きですって言われた。」
「私山根さんの絵好きですって言われた。」
「私山根さんの絵好きですって言われた。」
「私山根さんの絵好きですって、言われた。」
<彼女>
「よくわからなかった、3ヶ月セックスしてない恋人に結婚の話を持ち出すってどういうことだろう」
<彼氏>
「よくわからなかった、いつまで学生気分でいるんだろう。ずっと2人でいたいって思ってないのかな」
<彼氏>
「先輩が死んだ」
「飲むと必ず海に行こうという人だった」
「一晩中、先輩の話をしたかったけど、彼女はすぐに寝てしまった」
「一人でゲームをして、外散歩して、少し泣いたら眠くなったので、寝た」
「次の日の朝、彼女が話をしようとしてきたけど、なんかもうどうでも良かった」
<彼女>
「彼の先輩が死んだ」
「悪い人じゃなかったけど、お酒を飲むとすぐに女の子を口説こうとする人だった」
「恋人に暴力を振るったこともあった」
「亡くなったことはもちろん悲しかったけど、彼と同じように悲しむことはできなかった」
「そんな自分も嫌になって、次の日の朝、打ち明けようと思ったけど、もう遅かった」
「なんかもう、どうでも良くなった」
キャラもあるけど、男女の差って感じの心の声が、情報量とか単語量の違いで表されてて好き。
<感想>
・twitterの感想見ると、「めっちゃわかる!」派と「わからない」派がいるんだけど、体験したわかる〜とわからない〜が論争されるほど、あるあるすぎる、そこまで観た人の意見が別れるほど、リアルすぎるってことで、わからない派の意見があるのはめっちゃ褒め言葉なのかもしれない
・冒頭の「分けちゃダメなんだって恋愛は」「恋愛は一人に一人ずつ」「イヤホンを一人一個つけて同じ時に聞けばいい」っていうのが、この映画のメッセージっぽくて良い。最初に出てくるからつかみがあるし、イヤホンの例えもいい。
・「負けんなよ、社会性とか協調性って才能の敵だからさ」っていうセリフがあるのですが、
作り手の人ってこういうこと言う人多い印象で、ここもリアルって思いました
・カルチャーを通して共感していた。社会問題や現実問題(目標、就職、結婚、死)などでは違う価値観があり、2人がそれをお互いに否定してしまったのが別れの原因でしょうか、、
・宝石の国は2人で同時に読んだら、画面の隅まで見れないし、A子さんの恋人が積みあげられているのは悲し過ぎる
以上です!!